« 氷下魚(コマイ)も人も見かけじゃない! | トップページ | ラルドよわたしの血となり脂肪となれ その2 »

ラルドよわたしの血となり脂肪となれ その1

こんにちは小春です。

ようこそわたしのブログへ

急に寒くなってきたので体がついて行かず少し風邪気味になってしまいました。

皆さんもお気をつけてくださいね。

さて前回、わたしのまだ食べたことのない物が届くとお話した物が届きました。と言ってもわたしの所に届いたわけじゃないんですけどね。

四日ほど前、父ケンジが買ったばかりの[五代目古今亭志ん生 落語名演大全集全48巻]を借りようと、自転車で5分程の所の父の家(わたしの生家)に行った時のこと

「オレもまだ聞いてねえんだから、早くけえせよう」と辛うじて分かる志ん生のものまねで言った後

「そん時に、うめえもん食わしてやるよう」

もう志ん生には全く似ていなかったけど、「うめえもん」に引っかかった。

「何、うめえもんって」

「・・・・・・・・・・・・ラルドだよ」

なんでささやき声なのよ?

「・・・・・・・・・・・・ホント!あるの?」

思わずわたしもささやき声で。

「ブツは18日午後手に入る」

ブツって何の取引なのよ。

「じゃあ18日の夕方に来る、合言葉はいらないわね」って、わたしも乗りやすい性格。

要するに、注文していた豚の背脂の塩漬け「ラルド」が18日に届くとゆうことなんですけど、「ラルド」には夫トモヤも含め三人共思い入れがあったんです。

一年程前の事、父が仕事で知り合った流暢な日本語を操る、イタリア人のマリアさんと夫トモヤの店に来た時に、「めふんの塩漬け」(鮭の腎臓の塩漬けなんですがこれについては又別の機会に)を前にいろいろな塩漬けのお話になり、梅干し・ラッキョウ・桜葉・塩辛、父ケンジにいたっては戦国武将の首の塩漬けまで持ち出してマリアさんを気味悪がらせていたのですが、この時マリアさんが語ったラルドの話に三人とも魅了されてしまったのです。

ラルドはイタリアで作られる豚の背脂の塩漬けのことですが、日本の塩漬けは瓶とか樽の中で漬け込みますが、このラルドなんと一つの大理石の塊から切り出した容器の中で漬けるんですって。

最近は大理石以外の材質の容器が増えて来てるそうなんですけど、大理石で漬けた背脂はその脂身がそのまま大理石になってしまったかと思わせる、青みをおびたグレーの色合いになるそうです。

スパイスとハーブをまぶした背脂の塊をこの大理石の容器に塩漬けすること180日、出来上がったラルドをうすくスライスしてアツアツの料理の上に乗せたり、細かく刻んでパスタの調味料としたり、マリアさんは厚めに切って軽くあぶってワインを飲みながらそのまま食べるのがお好きなんですって。

父ケンジは

「そりゃあ珍味探検隊の俺たちが、食わねえわけにはいかねえなあ」

いつの間そんな隊ができたのよと思いつつも、それは是非とも食べてみたい。

「大将、どっかで手に入んない?」

夫を大将って呼んでるわたし。

「初めて聞きましたねえ」

こっちは丁寧語だし。

「小春調べとけよ」

こっちは丸投げだし

まだパソコンを持っていなかったわたしは

「どうやって調べるのよ」

まるで子供

見かねたマリアさんが

「わたしのお母さんに送ってもらいましょうか?」

「イ、イタリアから?」

「そりゃ悪いねえ、それじゃあよろしく」

少しは遠慮しなさいよねと、同意をもとめて夫を見ると、うれしそうにニコニコ笑っている。

まったくうちの男どもはと思いつつ、わたしも目じりを下げながら「すみませんねえ」とすっかりその気に。

マリアさんはそんな図々しい一家に、やさしい笑顔で「ダイジョウブデス、ダイジョウブデス」と急に外人みたいな発音になって言って下さった。

ところが、それから三日後に父からの電話でマリアさんのお母さんが亡くなった事を知らされたのでした。

あの日、日本酒に頬を染めニコニコしながら「ダイジョウブデス、ダイジョウブデス」と言って下さった優しく可愛いマリアさんが、遠く離れた日本で最愛のお母さんの死を知った悲しみと心細さを思うと、胸がしめつけられる思いでした。

マリアさんはそれからしばらくしてご主人と一緒に日本を離れイタリアに帰えられて、わたし達もその後なんとなくマリアさんの悲しい出来事とラルドが結びついて、その事を誰も口にしなかったんです。

そのマリアさんから一か月程前に父の所に、お子さんが生まれたことを知らせる手紙が来たと聞いていました。

元気な女の子だったそうです。

父もこのおめでたい話に気持ちが少し楽になって、ラルドを食べる気になったんでしょうか。

さっき声をひそめたのも父独特のテレなんだろうかなあとか思いながら、気持は三日後のラルドより目の前にある楽しみ志ん生だあー!と自転車をこぐ足に力がはいるのでした。

続く

初めての方は、よろしければわたしのブログ「はじめまして、小春です」へこちらからどうぞ。

             http://koharu-chinmi.cocolog-nifty.com/blog/

                                                    

|

« 氷下魚(コマイ)も人も見かけじゃない! | トップページ | ラルドよわたしの血となり脂肪となれ その2 »

グルメ・クッキング」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/493577/8996383

この記事へのトラックバック一覧です: ラルドよわたしの血となり脂肪となれ その1:

« 氷下魚(コマイ)も人も見かけじゃない! | トップページ | ラルドよわたしの血となり脂肪となれ その2 »